近年増加傾向にある契約方法に「定期借家契約」というものがあります。
この契約に適応される借地借家法は、賃貸事業を行う際には必要な法律知識です。
賃貸契約に関わる法律は、一般的に借主に優位なものが多いため、賃貸契約における法律を知らずに行う賃貸事業はトラブルの原因になりかねません。
■増加する定期借家契約
定期借地制度は2000年に施工された法律です。
優良な賃貸物件の供給量を増やすことを目的としています。
定期借家契約とは「貸主と借主の立場が対等な状態で、契約期間・家賃を自由に定め合意を行う賃貸契約」で、通常の賃貸借契約と多くの違いがあります。
マンスリーマンション・ウィークリーマンションも増加する中、それらの契約手段として定期借家契約が選択されることも増えています。
■オーナーが優位となる?定期借家契約による立ち退き請求
賃貸契約には「定期借地契約」と通常の「賃貸借契約」があります。
この2つは双方ともに契約期間は定められます。
賃貸借契約
期間満了時点で契約更新が可能
期間満了時点の再更新で「更新料」が必要となる場合がありますが、法的に定められている訳ではありません。
この更新料は、一般的に契約継続の対価なのです。
定期借地契約
期間満了を迎えることで契約が終了します。
契約書に再契約等の特約がある場合は再契約が可能で、再更新には手数料が不要なため借主にとってお得です。
しかし「やむを得ない事情」がない限りは、借主側から期間内の契約解除を行うことができません。
1年以上の契約期間で契約を行う場合、契約満了の6~12ヵ月前までに貸主は入居者に知らせる必要があります。
定期借地契約の場合、期間満了を迎えることで入居者を確実に退去ささえることができるのです。
通常の賃貸借契約の解約終了には、期間満了時点であっても賃貸契約解除に双方が合意する必要があります。
このような性質をもつため、期間が限定された転勤を理由に、期間を定めて賃貸を行う場合に優位となります。
通常の賃貸借契約において居住者を退去させようとする場合には、退去を求めるために法的に正当な理由が必要です。
・建物をリノベーションしたい場合
・居住者がトラブルを頻繁に起こす場合
・賃料不払いが頻繁な場合
・オーナー自体が居住用に利用したい場合
このような理由で入居者を立ち退かせたい場合、通常の賃貸借契約は「合意」が必要です。
この合意を得るための条件に、立ち退き料が必要となる場合が発生します。
それでも合意が得られない場合、退去をさせることは不可能となります。
■お得価格?賃料・礼金が安い定期借家契約
定期借家契約は、契約期間を限定するための契約方法という性質を持っています。
原則として再契約が不可能であることから、入居者が決まらないことも多いのです。
そのための対策として、一般的に「賃料・礼金」が相場よりも低く設定されていることが多いのです。
居住者がいないまま長期間放置するよりも、少しでも収入があった方が良いと言う考えをする人が殆どなのです。
賃貸借契約
減額特約(自動減額の特約の禁止)は、借主不利になるため特約は認められていません。
増額特約(自動増額の特約の禁止)は、借主有利になるため特約は有効となります。
定期借家契約
自動減額・増額の特約は借主にとって不利であっても有効です。
■定期借家契約を行う際の注意点
定期借家契約は、一般的にはオーナーに優位な契約です。
しかし、複雑な手続きも必要となるために注意が必要です。
契約満了前の終了通知を忘れてしまった場合、問題となります。
期間満了前に通知をすれば問題なく解約が行われます。
しかし期間満了時に「終了通知」を忘れた場合、慌てて出したところで6ヵ月後に解約できないためです。
期間満了後の「終了通知」については、法律による救済などは明確にされていません。
そのため本来必要のない立ち退き料がかかってくるのです。
終了通知を忘れてしまうことで、定期借家契約における権利が喪失してしまうのです。
契約終了が数年先の話であり、忘れてしまうこともありえるため、注意が必要となります。
■まとめ
定期借家契約は、賃貸契約と違いオーナーにとって有利な契約と言えます。
注意を必要とするのは、契約期間が長すぎることで起こる契約満了時期の失念です。
期間が短すぎると入退去時の費用(礼金・敷金・引越し費用)や引っ越しの手間がかかるため、家賃を低く設定されています。
家賃が安いことから、定期借家契約の住宅を渡り歩く人がいるため、一定数の需要は常に存在しています。
しかし入居期間や家賃を決定する際には、専門家に相談し妥当と思える期間・金額を設定することをお勧めします。